無執着という境地
ヨーガにおけるヴァイラーギャ(無執着)とは、この世が幻想であることを知ることです。
その境地に達した人はこの意味を理解することができますが、これでは理解できないという帰依者のために、無執着とは実際どのような状態であるのか、師のババジが次にように伝えました。
ババジ伝より引用します。
「一つのことに専心することがヴァイラーギャである。
人がどんな決心をしようとも、いかなる目標を立てようとも、それに徹底して集中し、不動の決意と信念を持ってそれを求めるべきである。
ただ頭を剃ってオレンジ色の衣をまとっても、執着を離れた者にはならない。
人は堅固な信義と強い意志そして完全なる集中を持たねばならない。」
さらに次のエピソードを付け加えて、無執着の状態を説明しました。
「シュカデーヴァがヴィヤーサに無執着に関して質問をした。
ヴィヤーサは、ジャナカ王のもとに行き、同じ質問をするように言った。
ジャナカ王は質問を聞くと、シュカデーヴァにミシーラの町を牛乳を一杯入れた鉢を持って歩くように命じた。
二人の護衛が抜き身の剣を持って付き、シュカデーヴァが牛乳を一滴でもこぼしたら彼の首をはねるように命じられていた。
シュカデーヴァは牛乳を満たした鉢を持って街に送り出された。
数時間後、彼はジャナカ王のもとに戻り、王は町で何を見たかとシュカデーヴァに尋ねた。
シュカデーヴァは、首をはねられることに意識を向けていたため、牛乳をこぼすまいと完全に集中していたため、街のことなど見なかったと答えた。
そこでジャナカ王は、どのように自分の目標に集中しなければならないかがこれであり、これが完全な集中であり、人生のすべてのことから無執着であることだと説明した。」
師ババジは続けて、
「完全なる集中と偉大なる信義と決意を持って、自分の目標に集中しなさい。
そうすればそれ以外のことは全て視界から消える。
そのとき、お前は執着を離れる。」
帰依者は無執着に関する理解を深め、次にように語りました。
「頭で理解するのはまだ初期段階であり、純粋な無執着に達するための体験は終わりがなく続く。
なぜならこの『幻想』の世界への私たちの執着は数えきれないほどだからである。」
物事に深く集中すると、それ以外の事は目に入らなくなり、忘我の境地に至ります。
私たちが目標を定めたならば、強い信念のもとに集中して取り組み、目標を達成させるべく尽力することが大切であり、それが私たちを次のステージへと導きます。
完全なる無執着という境地ははるか遠くにあるかもしれません。
ですが物事に専心して取り組み、他の欲望を捨て去ることもまた無執着と呼べる状態であり、その時人は自分を超えた能力を発揮できるのです。