3つのグナ
インド哲学において、この世を構成する要素をグナといい、グナが物質的世界の根本を為していると考えられています。
グナはサットヴァ、ラジャス、タマスの三種(トリグナと呼びます)があります。
・サットヴァ・・・純粋質(調和的で明るく純粋な性質)
・ラジャス・・・激動質(活発に動く性質)
・タマス・・・怠惰質(鈍く暗い性質)
私たちの心の状態も食べ物も、この世のあらゆるものには3つの性質が備わっています。
サットヴァ性の人の心
正義感があり穏やかで、知性を好み調和的で理性的。
バイタリティにあふれており、非常に健康で、心身共に満たされている。
ラジャス性の人の心
様々な刺激や体験を好み、じっとしていられず、おしゃべり。快感に対する欲望が強い。
情熱的だが感情に左右されることが多い。
エゴが強く、誰かと自分を比べて嫉妬しやすい。
タマス性の人の心
いつも怠けることを望み、睡眠や休息を好む。めんどくさがり屋。
短気で執着心が強く、過去の出来事を根に持つ。
食べ物におけるトリグナ
サットヴァ質の食べ物
新鮮で栄養が豊富な食べ物。食べることで生命力、勇気、力、健康、幸福、喜びを増大させるもの。
美味で心地よく、穏やかさが得られるもの。
出来立ての料理、旬の食べ物、新鮮な野菜や果物。
これらは純質的な者(サットヴァ性の人)に好まれる。
ラジャス質の食べ物
食べることで消化器や神経を刺激する食べ物。
過度に辛く、過度にすっぱく、過度に塩辛く、刺激性があり、苦痛と憂いと病気をもたらす食物。
激辛料理、アイス、スナック菓子、砂糖など。
これらは激質的な者(ラジャス性の人)に好まれる。
タマス質の食べ物
作ってから4時間以上経った食べ物、作り置きの料理、加工食品、鮮度がない食べ物。
揚げ物、肉など。
前日調理されたもの、食べ残しの食物は暗質的な者(タマス性の人)に好まれる。
タマス質のものを食べると、感覚が鈍り、目的意識が鈍り、ネガティブな方向に向かう。
理想的な質はサットヴァであり、心の状態をサットヴァ100%に近づけることで解脱へと導かれます。
バガヴァッド・ギーターでは、亡くなる時のグナの状態によって、次に向かう方向が変わると述べられています。
ところで、身体を持つ者(人間、個我)は、純質(サットヴァ)が増大した時に死ねば、最高(の真理)を知る人々の汚れなき世界に達する。(14)
激質(ラジャス)の増大した時に死ねば、行為に執着する人々の間に生まれる。暗質(タマス)の増大した時に死ねば、※愚昧(ぐまい)な者の胎に生まれる。(15)
純質(サットヴァ)から知識が生じ、激質(ラジャス)からは貪欲が生ずる。暗質(タマス)から怠惰と迷妄が生じ、また無知が生ずる。(17)
※愚昧(ぐまい)・・・愚かで、物の道理がわからないこと
参考文献
・バガヴァッド・ギーター / 上村勝彦 / 岩波文庫
・インドの聖典 ムニンドラ・パンダ/(有)アートインターナショナル