いつも平安な心を持って、穏やかに日々を過ごすということは難しいことです。
突然沸いた怒りを静め、悲しみを癒し、落ち着いた心の状態に戻す方法はあるのでしょうか?
心身共にリラックスしながら、穏やかな生活を送りたいと願う人に、大変参考になるヨーガの科学をご紹介しましょう。
以下、「心を平安に保つ方法」について「ババジと18人のシッダ」から抜粋します。
呼吸と生理学
人の生理機能の中で、不随意に働く一方で人の意思が及ぶのは、唯一呼吸だけである。
呼吸は意識的に制御することもできれば、消化をはじめとする他の生理機能と同様に、肉体による制御の下に自動的にも機能する。
つまり、呼吸は心と体をつなぐ重要なかけ橋であり、この双方に影響を及ぼすことができる。
呼吸のパターンは人の感情や心理状態を反映する。
怒っているときの呼吸は途切れがちになり、恐れを感じているときには瞬間的に止まることがある。
また、人は驚いたときには息を呑み、悲しい時には息を詰まらせ、ほっとしたときには安堵のため息をつく。
意識を集中しているときの呼吸はゆっくりとして安定しているが、心が雑念や散漫な感情に支配されているときには乱れがちになる。
心や感情で直接的に制御することは難しいが、呼吸を使ってそれらを間接的に制御することは可能である。
様々な瞑想の伝統は、雑念を取り除くために穏やかな呼吸を心がけることを教えてきた。
近代において、数多くの科学的な研究が、高血圧の治療や不安感の除去に、呼吸法が有効であることを証明している。
呼吸によって細胞に酸素が吸収されて、二酸化炭素が排出されるプロセスは、すべての生命体に普遍的に見られる基本的な生理現象である。
呼吸に必要な律動的な筋肉の収縮を司る中枢は「延髄」と呼ばれる。
生命の意思には十分な酸素の供給が不可欠なので、生命体は呼吸を通して常に十分な量の酸素を得る必要がある。
深い呼吸をすることによって、我々は普遍的な命の貯蔵庫エネルギーから引き出す。
またそれぞれの細胞は、個々の必要に見合った呼吸の速度を維持している。
呼吸器官が適切に機能しなければ、全細胞は必要なエネルギーの供給が得られない。
肉体と精神の全活動の背後にある基本的なエネルギーを「プラーナ」(霊妙な生命力)と呼んだ。
プラーナは我々が呼吸する空気、大地、飲み水、そして太陽光線に含まれる。
心は呼吸によって安定させることができます。
では、具体的にどのような呼吸によって心が安定するのか、「パタンジャリとシッダのクリヤ―ヨーガスートラ」から抜粋します。
第2章28
ヨーガの諸部門を実践することによって、不純なものが減少していき、際立った識別を生じさせる智慧の光がもたらされる。
ヨーガの諸部門には、抑制、遵守、座法(ポーズ)、呼吸法、五感制御、集中、瞑想、超意識状態があります。
この中の呼吸法についてご紹介します。
第1章34
または、(乱されることのない落ち着いた意識は)(細心の)呼気と呼吸の保持によって(もたらされる)。呼吸を意識し、1:0:2:0,あるいは2:0:2:0の割合でゆっくりと呼吸し、呼吸を磨くことにより、五感と心は静まります。
上記の数字は、呼気の長さ、吸気と呼気の間の長さ、呼気の長さ、呼気と次の吸気の間の長さを表します。
0は、呼吸を止めないことを示しています。
息がゆっくりと入って来て、出ていくのを観察することにより、平衡状態が生み出されます。
心と呼吸は密接に関連しており、特定の心理状態には特定の呼吸のパターンがあります。
呼吸が緩やかな時には、内面の活動も緩やかです。
心が動揺している時には、呼吸もそうなります。
ですから、呼吸をコントロールすることによって、心をコントロールすることができるのです。
この節は呼吸のコントロールではなく、ゆっくりと一定の呼吸を意識することを述べており、それゆえそのことを示すような言葉が使われています。呼吸を意識することはいつでもできますし、長時間行うこともできます。
心が乱れている時には特に有効です。
呼吸を意識することによってサマーディがもたらされることもあります。
参考文献
・ババジと18人のシッダ
・パタンジャリとシッダのクリヤヨーガスートラ