よき思いやりを育むために・暗示からの解放と自己実現の道

正中心を生きる~善良な思いやりとは
私たち人間は、他者との関わりの中で無意識のうちに様々な影響を受けています。それは、まるでインターネットを通じて情報を共有するように、互いの脳が繋がり、意識の奥底で情報を交換しているかのようです。特に発信力の強い人々、例えば親や教師、親密な関係にある人物からの影響は、私たちの思考や感情、行動パターンに深く刻み込まれ、時に自己否定的な感情や行動へと私たちを導いてしまうことがあります。この現象を「暗示」と呼びます。
私たちが「よき思いやり」を持つためには、まず自分自身が幸せな状態にあることが不可欠です。それは、日々の生活の中で心配や不安を感じることなく、心から挑戦したいと思える仕事に打ち込める状態。自分が置かれている状況や役割に大きなやりがいを感じ、それを心から楽しむことができる状態。そして、他人を肯定も否定もしない、ニュートラルな視点を持つことができる状態。さらに、自分自身の可能性を信じられるからこそ、他者の可能性も心から信じることができる状態です。
そのような幸せな状態にある時、私たちは自然とポジティブなエネルギーを発し、同じように幸せを追求する人々が周りに集まってきます。彼らと共に、それぞれの得意分野を生かし、互いに役立つ情報交換を行い、自然と協力関係が生まれます。そうして、私たちは共に成長し、発展していくことができるのです。
しかし、現実には「いつだって他人と自分を比較してしまう」「どうせ人に裏切られるに違いない」「苦労してこそ人生というものだ」「楽しいことのあとには必ず苦しみが待っている」「いつも不安だ」といったネガティブな感情に囚われている人も少なくありません。もしあなたがそう感じているのであれば、それはあなた自身に何らかの「暗示」がかかっている可能性を示唆しています。
暗示の正体・他者からのメッセージ
驚くべきことに、私たちが抱く否定的な考えや感情の多くは、私たち自身の内側から湧き上がってくるものではなく、他者からの「暗示」によって植え付けられたものなのです。私たちは無意識のうちに他者の暗示を自分の考えであるかのように受け入れ、自分の心の中に置き換えてしまっています。
残念ながら、このような暗示のメカニズムは学校教育や社会生活の中でほとんど語られることはありません。そのため、多くの人々は否定的な考え方を自分の性格の一部であると誤解しています。しかし、本来の私たちは、自分自身を肯定も否定もしない、ニュートラルな存在として生きることができます。これは紛れもない真実なのです。
ここで重要なのは、この議論が自分の性格の癖を他人のせいにするためのものでは決してないということです。私たちは、自分自身の感情や思考に責任を持つ必要があります。しかし、同時に、他者からの暗示が私たちの精神に与える影響を理解し、そこから自由になるための努力も怠ってはなりません。
暗示のメカニズム・情報伝達と影響力
なぜ、私たちは他者から暗示を受けてしまうのでしょうか?それは、人間関係において、情報の伝達力、つまり「発信力」が強い人の暗示の影響を受けやすいからです。特に、私たちに大きな影響を与えるのは、発信力の強い親や教師、その他、密接に関わってきた人々です。彼らの言葉や行動は、私たちの心に深く刻み込まれ、無意識のうちに行動や思考のパターンを形成していくのです。
特に「いい人」と呼ばれるような人々は、相手の言い分をしっかりと聞こうとする傾向があるため、暗示を受けやすいと言えます。彼らは相手の言葉に耳を傾け、情報を積極的に受け入れようとするため、無意識のうちに相手の暗示の影響下に入りやすいのです。
私たちの脳は、インターネットのように他者と情報を共有する能力を持っています。それは、ある種のテレパシー能力と言えるかもしれません。脳が特定の情報にアクセスした時、より強い力を持つ者、つまり発信力の強い者の影響を受けやすいのです。
例えば、親子の関係においては、ほとんどの子供は親の言動の影響下に置かれます。「お前は何をやってもダメだね」という言葉を親から浴びせられた子供は、親の言葉の暗示を受け、「自分は出来が悪い子なんだ」という自己認識を持つようになります。その結果、子供は親の期待に応えられない行動パターンを繰り返し、やがて「どうせ自分なんて…」が口癖になり、卑屈な考え方をするようになるのです。
しかし、これは子供自身が自分のことを本当にダメだと思っているわけではありません。むしろ、親が子供にそう思わせているのです。なぜなら、親にとっては、子供にそう思わせた方が、子供が親から離れず、管理しやすいという側面があるからです。親は「だから言ったじゃない。親の言うことは聞くもんだよ。お前は何をやってもダメなんだからね。親のそばにいなさい」という言葉で、子供を支配しようとするのです。
孤独への恐れ・暗示の源泉
親が子供に暗示を与える背景には、しばしば「孤独になりたくない」という感情が存在します。例えば、父親が「子供には自分よりも出世してほしくない。子供が自分よりも出世したら、自分がみじめになる」という本音を抱えていると、子供の脳に「出世すると不幸になる」という暗示がかかります。その結果、子供は出世した時に罪悪感にとらわれたり、自分だけ幸せになってはいけないと自分を否定するようになります。出世すること、幸せになることがまるで悪いことのように感じてしまうのです。
しかし、子供に「出世したら不幸になる」と感じさせているのは、子供自身ではありません。それは、他ならぬ「父親」なのです。
また、夫婦関係が上手くいっていない母親が「娘には結婚してほしくない。娘がいなくなったら自分の孤独と向き合わなくてはならない。一人きりは耐えられない」という本音を持っていると、娘は母親から離れることに罪悪感を感じます。孤独になりたくない「母親」の暗示がかかるのです。その結果、娘は親離れせずに独身でいるか、結婚しても気持ちが不安定になり、親元に戻ろうとするのです。
このように、自分でも理由はわからないけれど、なぜかわいてくる自己否定の感情は、自分以外の人の暗示によって引き起こされている可能性があります。それは、他人の思いを自分の脳にコピーして、他人になりきっている状態と言えるでしょう。
暗示と学習・コピーの連鎖
子供は親を見て育ちます。赤ちゃんは大人の動きをコピーして動きを覚え、成長するにつれて親や他人の思いをコピーしていきます。勉強が好きな親を見て育つと、子供は親と同じように勉強好きになります。親子で似たような思考回路、行動パターンになるのは、親の影響下にある子供に暗示が入るからです。
子供は脳から学習に適したα波が出ているため、親や他者の暗示が容易に入りやすい状態にあります。いつも一緒に行動している上司と、いつのまにか同じような話し方、考え方になっているのもまた暗示の一つです。
つまり、自分以外の発信力が強い人の思いが暗示となって人に強く影響を与え、やがてその人の性格の一部のようになっていくのです。
見え隠れする本音・言葉の裏側
人の本音は外からは見えません。人は本音を隠します。「子供には自分より出世してほしくない」と本音では思いながら、良い親を演じます。そして「社会はお前が思うほど甘くないんだ。お前を心配しているんだよ」と心配するふりをしながら、子供のやる気をそぐ言動を繰り返してしまうのです。
すると子供は「親は自分を心配してくれている。社会を甘く見ている自分が悪い」と自分を責めて、本来の自由な感覚を失います。そして、親のそばにいることを選択するのです。
親も人間なので、無意識に本能に従います。生命維持に関わる危険を回避する行動をとります。「一人きりになりたくない」「みじめになりたくない」といった感情は、孤独から自分を守るための、本能からくる行動です。瞬間的にわいた孤独の感情に、本人も気づかないことさえあります。
嫁いびりなどは、「息子が奪われてしまった」という母親の孤独の感情から生まれる行動です。孤独を埋めるために嫁を責めていじめ、息子を取り戻そうとするのです。
親子の場合、親が教育、しつけと称して、子供に暗示を入れることがあります。良い暗示であれば問題ありませんが、親の孤独感が強い場合、その孤独を埋めるために子供にネガティブな情報を与え、無意識のうちに自分の支配下に置こうとするのです。
暗示からの解放・幸せへの第一歩
この負のスパイラルを断ち切るためには、最初に述べたように、まず自分自身が幸せな状態になることが最も重要です。自分自身を満たし、幸福感を得ることで、他者からのネガティブな暗示の影響を受けにくくなります。
自分自身を幸せにするためには、まず自分の内なる声に耳を傾け、本当にやりたいこと、本当に好きなことを見つける必要があります。そして、それらに積極的に取り組み、情熱を注ぐことで、充実感と幸福感を得ることができます。
また、自分自身を肯定し、自分の価値を認めることも重要です。私たちは皆、唯一無二の存在であり、素晴らしい才能と可能性を秘めています。自分の長所や得意なことを見つけ、それを伸ばすことで、自信を持つことができます。
さらに、他人との比較をやめ、自分のペースで成長していくことも大切です。私たちは皆、違う個性を持っており、成長のスピードも異なります。他人と自分を比較するのではなく、過去の自分と比較し、少しずつでも成長していることを実感することで、自己肯定感を高めることができます。
そして、何よりも大切なのは、感謝の気持ちを持つことです。私たちは、生きていく中で、様々な人々に支えられ、助けられています。感謝の気持ちを持つことで、周囲の人々とのつながりを深め、より豊かな人間関係を築くことができます。
自分自身を幸せにすることで、私たちはポジティブなエネルギーを発し、周囲の人々にも良い影響を与えることができます。そして、共に成長し、発展していくことができるのです。
暗示からの解放は、自己実現への第一歩です。自分自身の可能性を信じ、積極的に行動することで、私たちはより幸せで豊かな人生を送ることができます。
まとめ・よき思いやりは、自己愛から生まれる
「よき思いやり」を持つためには、まず自分自身を愛し、大切にすることが不可欠です。他者からの暗示に気づき、そこから自由になることで、私たちは自分自身の可能性を最大限に引き出すことができます。そして、自分自身が幸せになることで、周囲の人々にも良い影響を与え、共に成長していくことができるのです。「よき思いやり」は、自己愛から生まれると言えるでしょう。自分を大切にすることが、他者への思いやりに繋がるのです。