物質の非現実性を理解する・パラマハンサ・ヨガナンダの教えとその現代的意義

人は霊的エネルギーで生きている
パラマハンサ・ヨガナンダの著書「人間の永遠の探求」の一節、「講和六 物質の非現実性を理解する」は、物質世界の捉え方について深く考察する上で非常に重要な示唆を与えてくれます。
この章では、インドの聖典が伝える物質の非現実性という概念を、単なる哲学的な思索としてではなく、科学的な内的探求を通して体験的に理解することの重要性を説いています。
現代社会において、物質主義的な価値観が蔓延し、精神的な豊かさが軽視されがちな状況において、ヨガナンダの教えは、私たちが真に豊かに生きるための道標となり得るでしょう。
1. 物質中心主義からの脱却・内的探求の必要性
現代社会は、目に見える物質的なものに過剰な価値を置きがちです。成功の基準は、収入、地位、所有物といった外的な要素によって測られ、内面の成長や精神的な充足は軽視される傾向にあります。
しかし、ヨガナンダは、物質的な豊かさだけでは真の幸福は得られないことを示唆し、内的な探求の必要性を強調します。インドの聖典が語る物質の非現実性とは、物質が絶対的な存在ではなく、より根源的なエネルギーの現れに過ぎないという認識です。
この認識を得るためには、単に教えを信じるのではなく、瞑想や自己観察といった科学的な内的探求を通じて、自ら体験的に理解することが重要となります。

2. プラーナ・物質と精神をつなぐ生命エネルギー
ヨガナンダは、肉体を自分自身だと考える一般的な認識に疑問を投げかけ、肉体の存在を支える基本的な要素であるプラーナ(生命エネルギー)の重要性を説きます。
肉体は食物によって養われていると考えられがちですが、実際には、プラーナこそが肉体と宇宙エネルギーの源をつなぐ生命線なのです。プラーナが肉体から引き上げられると、どんな食物や薬も肉体を蘇らせることはできません。古代インドの賢者たちはプラーナの存在を発見し、それを統御する方法としてプラーナーヤーマ(呼吸法)の科学を確立しました。
プラーナーヤーマは、単なる呼吸法ではなく、生命エネルギーをコントロールし、心身のバランスを整えるための高度なテクニックです。現代社会において、ストレスや過労によってプラーナが消耗しがちな私たちにとって、プラーナーヤーマは心身の健康を維持し、活力を高めるための有効な手段となるでしょう。
3. イエスの言葉が示す宇宙エネルギーの重要性
ヨガナンダは、イエスが荒れ野で40日間の断食をした際に語った言葉、「人はパンだけで生きているのではない。神の口から出る一つ一つのことばによって生きているのである」(マタイによる福音書4・4)を引用し、宇宙エネルギーの重要性を強調します。
ここでいう”ことば”とは、宇宙エネルギーの波動であり、”神の口”とは、脳の後部にあって脊髄に続いている延髄のことです。延髄は、人体の最も重要な部分であり、宇宙エネルギーが人体に流入する”神の口”として機能します。
断食は、肉体的な食物の摂取を断つことによって、肉体が生命エネルギーに依存するようになることを体験的に理解するための手段となります。現代社会において、過食や偏った食生活によって肉体が不調をきたしがちな私たちにとって、断食は、肉体を浄化し、宇宙エネルギーとのつながりを回復するための有効な手段となるでしょう。
4. 意志の力・無限のエネルギーを引き出す源
ヨガナンダは、人間の意志の力を偉大なエネルギーの発電機であると表現し、意志の力と積極的意欲によって、内なる無限のエネルギーの宝庫から即座にエネルギーを引き出すことができると説きます。
日常の仕事でも、積極的意欲のない人はエネルギーが欠乏してきますが、意欲のある人は宇宙エネルギーが流入するため、肉体的にも精神的にも厳しい仕事に耐えることができます。意志の力を利用してこの無尽蔵の宇宙エネルギーを意識的に取り入れることにより、霊的に生きる方法を身につけた人は、様々な肉体的束縛を克服することができるのです。
現代社会において、目標を見失い、無気力になりがちな私たちにとって、意志の力を高め、積極的な意欲を持つことは、人生を充実させ、自己実現を達成するための鍵となるでしょう。
5. 物質化・非物質化の可能性・物質の非現実性の証明
ヨガナンダは、インドのヨギや聖賢たちが、「物質は精神素材が具象化したものである」と語っていることを紹介し、中には、イエスのように、自分の肉体や様々な物体を実際に物質化したり非物質化したりして、この真理を実証して見せた人たちもいると述べています。
これらの現象は、現代科学ではまだ完全に解明されていませんが、物質が絶対的な存在ではなく、意識やエネルギーによって変化する可能性があることを示唆しています。物質化や非物質化の可能性を信じることは、私たちが持つ潜在能力を信じることにつながり、自己変革への意欲を高めることにつながるでしょう。
6. 現代社会におけるヨガナンダの教えの意義
現代社会は、情報過多、ストレス、孤独感といった様々な問題を抱えています。物質主義的な価値観が蔓延し、精神的な豊かさが軽視される中で、多くの人々が生きる意味を見失い、幸福を感じられない状態に陥っています。
ヨガナンダの教えは、このような現代社会の病理に対する処方箋となり得るでしょう。物質の非現実性を理解し、プラーナや宇宙エネルギーの重要性を認識し、意志の力を高めることで、私たちは物質的な束縛から解放され、真の幸福を見つけることができるはずです。
7. 実践的なアプローチ・日常生活におけるヨガナンダの教えの活用
ヨガナンダの教えを日常生活に取り入れるためには、以下の実践的なアプローチが考えられます。
- 瞑想の実践・ 瞑想は、内なる静けさを体験し、自己認識を深めるための有効な手段です。毎日少しずつでも瞑想を行うことで、心の状態を安定させ、ストレスを軽減することができます。
- プラーナーヤーマの実践・ プラーナーヤーマは、生命エネルギーをコントロールし、心身のバランスを整えるための有効な手段です。呼吸法を正しく行うことで、活力を高め、集中力を向上させることができます。
- 積極的な意欲を持つ・目標を設定し、それに向かって積極的に行動することで、意志の力を高め、宇宙エネルギーを引き寄せることができます。困難に直面しても、諦めずに前向きな姿勢を保つことが重要です。
- 感謝の気持ちを持つ・日常生活の中で、当たり前のことにも感謝の気持ちを持つことで、心の状態をポジティブに保ち、幸福感を感じやすくなります。
- 奉仕の精神を持つ・他人のために行動することは、自己中心的な考え方を克服し、精神的な成長を促します。ボランティア活動や社会貢献活動などを通じて、他者を助けることで、自己の存在意義を感じることができます。
真の豊かさを求めて
パラマハンサ・ヨガナンダの教えは、物質的な豊かさだけでは満たされない人間の心の奥底にある渇望を満たすための道標となります。
物質の非現実性を理解し、プラーナや宇宙エネルギーの重要性を認識し、意志の力を高めることで、私たちは物質的な束縛から解放され、真の幸福を見つけることができるはずです。
現代社会において、ヨガナンダの教えは、私たちがより豊かに、より充実した人生を送るための鍵となるでしょう。