常陸国の神々・東国三社参り・鹿島散歩 / 大杉神社

鹿島散歩 / 大杉神社・夢むすびの聖地を巡る
茨城県南部に位置する稲敷市阿波。そこには、常陸風土記にも名を連ねる古社、大杉神社が鎮座しています。側高神社を後にし、車を走らせること約30分。緑豊かな田園風景の中に現れる、その絢爛豪華な姿は、まさに圧巻の一言です。年間50万人もの参拝客が訪れるという、この知る人ぞ知るパワースポットを、今回はじっくりと散策しました。
悠久の歴史を刻む、安婆嶋(あんばさま)の記憶
大杉神社の歴史は、実に古く、鹿島神宮や香取神宮よりも遡ると言われています。その起源は、常陸風土記に記された安婆嶋(あんばさま)という地に求められます。かつてこの一帯は、湖沼が広がる湿地帯であり、その中に浮かぶ島が安婆嶋でした。そして、その島に聳え立つ巨大な杉が、「あんばさま」と呼ばれ、人々から畏敬の念を集めていたのです。
この「あんばさま」こそが、大杉神社の原点であり、御神体そのものでした。古代の人々は、自然の中に神の存在を感じ、巨木や岩などを依り代として崇拝しました。大杉神社もまた、その流れを汲み、巨木である杉を神として祀り、海河守護の神として信仰を集めてきたのです。
時代が流れ、社会が変化していく中で、大杉神社の信仰は、民衆の生活に深く根ざし、篤い崇敬を受け続けてきました。漁業や農業を生業とする人々は、豊漁や豊作を祈願し、航海の安全を願って、大杉神社に足を運びました。また、厄除けや病気平癒、家内安全など、様々な願いを託し、神の加護を求めたのです。
二の鳥居をくぐり、神域へ

大杉神社の入り口に立つのは、堂々とした佇まいの二の鳥居です。この鳥居をくぐる瞬間、俗世との境界線が引かれ、神聖な空間へと足を踏み入れることになります。鳥居の傍らには、「安婆嶋」の由来となった巨大な杉の木がそびえ立っています。その力強い姿は、太古の昔からこの地を見守ってきた神の象徴であり、訪れる人々に畏敬の念を抱かせます。
神門・天狗の守護と夢むすびの始まり
二の鳥居をくぐり、参道を進むと、鮮やかな朱塗りの神門が見えてきます。この神門には、大杉神社の御眷属である「かなえ天狗」と「ねがい天狗」が祀られています。

今から約800年前、大杉神社には、源義経と行動を共にしたこともある常陸坊海存(海尊)という社僧がいました。海存は、巨体に紫髭、碧眼、鼻高という特徴的な容貌をしており、不思議な力を持っていたと言われています。大杉大明神の御神徳によって、病を治し、多くの人々を救い、数々の奇跡を示しました。
その姿と奇跡から、「海存は大杉大明神の眷属で、天狗である」という信仰が生まれました。当初は、海存の風貌から烏天狗が御属とされていましたが、後に陰陽一対として、鼻高天狗と烏天狗の両天狗が御眷属とされるようになりました。
現在では、海存の奇跡に由来して、大杉神社は日本で唯一の「夢むすび大明神」と称されています。鼻高天狗は「ねがい天狗」と呼ばれ、人々の願いを大杉大明神に届ける役割を担い、烏天狗は「かない天狗」と呼ばれ、人々の願いを叶える役割を担っています。
拝殿・華麗なる装飾と神々への祈り

神門をくぐると、目の前に現れるのは、絢爛豪華な装飾が施された拝殿です。その鮮やかな色彩と精緻な彫刻は、訪れる人々を圧倒し、まるで日光東照宮を訪れたかのような錯覚を覚えます。

拝殿の前には、茅の輪が設置されており、参拝者は茅の輪くぐりをすることで、半年間の罪穢れを祓い清め、無病息災を祈願します。
拝殿では、倭大物主櫛甕玉大神をはじめとする神々が祀られており、参拝者はそれぞれの願いを込めて、手を合わせます。厄除け・八方除け・星除けの祈願はもちろんのこと、夢むすび(恋愛成就・心願成就など)の祈願も多く行われています。
麒麟門・災厄を封じ込める神聖な門
拝殿の奥には、麒麟門と呼ばれる門があります。この門は、江戸時代に建てられ、火災などの災厄を封じるために、江戸の鬼門の位置に建てられました。麒麟や龍、獅子などの彫刻が施されており、その荘厳な姿は、見る者を圧倒します。

麒麟門は、災厄を封じるために建てられた門であるため、常時閉門されています。しかし、その神聖な雰囲気は、訪れる人々に強い印象を与えます。
悪縁切りの斎庭・過去との決別と新たな始まり
拝殿の左手前には、悪縁切りの斎庭(ゆにわ)があります。この斎庭は、過去の悪縁を断ち切り、新たなスタートを切るための場所として、多くの人々が訪れます。

斎庭では、心の中で3回おまじないを唱えて、土器を叩き割ります。この土器を割るという行為は、過去の悪縁を断ち切り、過去の自分と決別することを意味します。また、自宅の玄関先で土器を叩き割り、そのかけらを袋に納めて、こちらの斎庭に撒くという方法もあります。

割られた土器の破片は、斎庭に散らばり、その様子は、過去との決別と新たな始まりを象徴しているかのようです。
雪隠神・トイレの神様に見守られて
大杉神社の境内には、トイレの神様である”雪隠神(せっちんがみ)”が祀られています。雪隠神は、古くから日本各地で信仰されており、トイレを清潔に保ち、排泄行為を神聖なものとして捉える考えに基づいています。

大杉神社の雪隠神が祀られたトイレは、境内同様に華やかなつくりになっており、訪れる人々を驚かせます。

ご神木 三郎杉・大杉神社のシンボル
大杉神社の境内には、ご神木である三郎杉がそびえ立っています。樹齢数百年の巨木であり、その力強い姿は、大杉神社のシンボルとして、多くの人々に親しまれています。

三郎杉の周りには、神聖な空気が漂っており、訪れる人々は、そのエネルギーを感じながら、神の恵みに感謝します。
夢むすび祈祷・願いを天に届け、夢を叶える
大杉神社は、日本で唯一の『夢むすび大明神』として知られています。夢むすびとは、恋愛成就や心願成就など、様々な願いを叶えるための祈祷です。
大杉神社では、家内安全、厄除・八方除・星除、交通安全などの御祈祷はもとより、特別な願い事(受験や昇進、事業発展、創業など)や、良縁を迎えたい方々には、『夢むすび祈祷』をお勧めしています。
特に縁談は、急に考えてもなかなか良いご縁に恵まれるものではありません。最近では、10代~20代前半の頃からご本人あるいはご両親が『夢むすび』の三年参りや、毎年「正五九参り」される方が増えています。
夢むすび祈祷は、お祀りされている「ねがい天狗」と「かなえ天狗」が大杉大明神に願いを届け、夢を叶えてくれると言われています。夢むすびには、最適な年まわりがあるそうです。
まとめ・大杉神社で夢を紡ぎ、未来を切り開く
大杉神社は、悠久の歴史と伝統、そして夢むすびの信仰を持つ、非常に魅力的な神社です。絢爛豪華な社殿、神聖な雰囲気、そして夢を叶える力を持つ天狗の存在は、訪れる人々を魅了し、心の奥底に眠る願いを呼び覚まします。
悪縁を断ち切りたい、夢を叶えたい、良縁を迎えたい、そう願う人々にとって、大杉神社は、希望に満ちた未来への扉を開くための、特別な場所となるでしょう。ぜひ一度、大杉神社を訪れ、神聖な空気を感じながら、自分の夢を紡いでみてください。