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断食と大腸菌、酵母菌の寿命の関係
米国国立生物工学情報センター(NCBI)の『Fasting: Molecular Mechanisms and Clinical Applications / Valter D. Longo and Mark P. Mattson』によると、
大腸菌は、栄養を与えない環境においたところ、寿命が4倍ほど長くなります。
酵母菌においては、寿命が2倍ほど長くなり、さまざまなストレス耐性も大幅に増加します。
また線虫やショウジョウバエも、断食によって寿命が大幅に伸びます。
断食中の細胞内の変化
寿命が長くなるメカニズムは、細胞内にあります。
細胞を傷つける活性酸素を取り除く酵素「スーパーオキシドジスムターゼ(※1)」や、細胞を保護するたんぱく質「ヒートショックプロテイン(※2)」などが、断食により増加します。
細胞が老化しないように、これらが強力に働き、寿命が延びるというメカニズムです。
※1スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素。
酸素消費量に対するSODの活性の強さと、寿命に相関関係があるとされている。
動物の中でも霊長類、とくにヒトはSODの活性の高さが際立ち、ヒトが長寿である原因のひとつとされている。
がん細胞では活性酸素が高頻度に産生されており、SODを阻害する場合があるため、抗がん剤の標的として研究が行われている。
※2ヒートショックプロテイン(HSP)
しなびたレタスを2分間50℃のお湯に浸すと、シャキッとしたレタスに戻る。これは熱ストレスによって、野菜の細胞が活性化したためであり、HSPによるものである。
熱ストレスによりHSPが増加し、酸化を防御する。
HSPはほとんどの生物が備えているたんぱく質である。
熱ストレス、病原菌、紫外線などのストレスによりたんぱく質は傷つくが、たんぱく質を修復して、自己回復力を向上させるたんぱく質が人間の体に備わっている。それがHSPである。
傷ついた細胞を修復し、体を元気にするのがHSPの役割である。
断食が人間の細胞に変化をもたらす
人間の寿命が同じように伸びるのかを計測するのは困難です。
なぜなら人間の寿命を調べるには、長い年月がかかってしまうからです。
しかし、分子レベルでは、断食によって人間の細胞にどんな変化が起こっているのかが、分かり始めています。