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若さを保つ鍵、テロメア
細胞の寿命はテロメアが握る
近年、断食はテロメアを長くすることができると注目されています。
テロメアは、1930年代に細胞遺伝学的研究から発見されました。
2009年にはアメリカの生物学者、エリザベス・H・ブラックバーン博士が、テロメアを伸長する酵素テロメラーゼを発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
テロメアは染色体の末端に付いているキャップのようなもので、らせん状になっている大切な遺伝情報を保護する役目を担っています。
ブラックバーン教授は、テロメアを“靴ひもの先端”に例えています。先端のビニール製の止め具がなくなると、ひもの糸がばらばらにほどけてしまうという意味です。
命の回数券・テロメア
わたしたちの体をつくっている細胞は、常に分裂を繰り返し、新しい細胞をつくりだすことで若さを保ちます。
60兆個ともいわれる全身細胞が日々分裂を繰り返し、生命活動を維持しています。
しかし、細胞は無限に分裂できるわけではありません。
テロメアは、『命の回数券』『命のろうそく』とも言われ、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなります。
これに伴って、細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなります。細胞の死です。
つまり細胞の寿命は、遺伝情報が詰まった染色体の末端にある”テロメアが短くなること”が関与しています。
このテロメアの短縮を抑えることで、細胞の寿命を長らえる効果が期待できるのです。
高ストレス、喫煙、肥満などでもテロメアは短くなります。これらは酸化ストレスとも相関するものと考えられています。テロメアに蓄積したダメージは、テロメアの短縮をさらに促す可能性があります。
日光を浴び過ぎること、たばこを吸い過ぎることで紫外線や有害物質の作用で細胞が傷つきます。すると細胞は新しくなるため活発に分裂するようになり、これに伴ってテロメアが短くなります。
テロメラーゼ(テロメアを伸長する酵素)の働きが追いつかないと、細胞の中では染色体がテロメアを失って不安定になり、他の染色体とつながってしまったりします。
こうしてがんのリスクが高まります。アルコール性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行するときもこうしたことが起きています。
2007年にイギリスで行われた中高年の男女1500人を対象にした研究が行われました。
そこで、テロメアが最も短いグループが5年以内に心臓病を発症する確率は、テロメアが最も長いグループの2倍であるという結果が出ました。
2004年ブラックバーン教授は、ストレスが体に影響を及ぼすという、いわゆる「心身相関」を調べるための実験を行いました。
その結果、母親が子どもを看病する時間が長いほど、母親のテロメアは短く、テロメラーゼ(テロメアを伸長する酵素)のレベルは低く、テロメアやDNAが破壊される酸化的ストレスは高いことがわかりました。
テロメアを長くする断食
このテロメアを伸長する効果が断食に期待できることが注目されています。
2017年に発刊され、ニューヨークタイムズ紙ベストセラーとなった『younger』。
著者のアメリカ人婦人科医のサラ・ゴッドフリード博士は、自身が44歳の時にテロメア年齢が64歳と、実年齢よりも20歳も老けていたことにショックを受け、若返り術を研究。
やがて実年齢49歳の時に、テロメア年齢を50歳まで巻き返すことができました。
テロメア年齢をを14歳分も若くする、つまりテロメアを長くすることに成功したのです。
その若返り術の一つが、週に2回のプチ断食でした。プチ断食とは、夕方18時〜翌昼12時までの断食するというものです。
さらにアメリカの研究員が4,500名以上に対して行った調査によると、地中海式の食事(フルーツや野菜、全粒穀類、ナッツや種、豆、オリーブオイルがベースの地中海式の食生活)をした人は「テロメア」が長いという結果が出ました。
このように断食や食生活が、テロメアを若返らせる効果があることが分かりました。