常陸国の神・東国三社参り・鹿島散歩 / 坂戸神社・沼尾神社

霊力と古代信仰の痕跡を辿る
古来より神々が息づき、豊かな自然に育まれた常陸国。その地には、人々の信仰を集め、悠久の時を超えて鎮座する数多くの神社が存在します。今回の旅では、東国三社参りの一環として、鹿島神宮の深奥に繋がる二つの古社、坂戸神社と沼尾神社を訪ね、古代信仰の痕跡と深遠なる霊力に触れる旅に出かけましょう。
かつて「香島の天の大神」と称された鹿島神宮、坂戸神社、沼尾神社の三社。その起源は、常陸国風土記にまで遡ります。風土記の香島郡の項には、「その地に鎮座まします天の大神の社・坂戸の社、および沼尾の社の三社合わせ称して香島の天の大神(かしまのあめのおおかみ)と申し上げる。(この神のおいでになることに)よって群(こおり)の名とした。」と記されています。この記述から、香島の地名が、この三社に由来するほど、古代の人々にとって重要な聖地であったことが伺えます。
時は流れ、中世、近世と時代が移り変わる中で、三社の関係は徐々に変化していきました。しかし、現在でも鹿島神宮の境内に坂戸神社と沼尾神社の遥拝所が設けられていることから、その歴史的な繋がりを垣間見ることができます。
今回の旅では、鹿島神宮を起点に、坂戸神社、沼尾神社を巡り、それぞれの神社の持つ独特の雰囲気と霊力を体感しながら、古代信仰の痕跡を辿ります。
第一の目的地・鹿島神宮 – 香島の天の大神を遥拝する
まずは、東国三社の一社であり、武神・経津主大神(フツヌシノオオカミ)を祀る鹿島神宮を参拝します。広大な境内には、本殿、拝殿をはじめ、奥宮、御手洗池、鹿園など、見どころが満載です。

本殿で参拝を済ませた後、境内を散策し、坂戸神社、沼尾神社の遥拝所を目指します。遥拝所は、鹿島神宮の鳥居をくぐって左手に位置しており、それぞれの神社の名前が記された石碑が建立されています。
遥拝所から、遥か彼方の坂戸神社、沼尾神社に思いを馳せ、それぞれの神社の御神徳を祈念します。遥拝所での参拝を通して、かつて「香島の天の大神」として崇められた三社の繋がりを再認識し、これから訪れる坂戸神社、沼尾神社への期待を高めます。
第二の目的地・坂戸神社 ~中臣氏の祖神を祀る静寂の社
鹿島神宮から車で約10分。田園風景が広がる中に、ひっそりと佇む坂戸神社。民家の集落の中に位置するため、少しわかりにくい場所にありますが、周囲とは明らかに異なる、静謐な空気が漂っています。

坂戸神社の御祭神は、天児屋根命(アメノコヤネノミコト)。天児屋根命は、忌部氏(いんべし)とともに宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)を司った中臣氏の祖神であり、神事や祝詞を司る神として崇められています。

鳥居をくぐると、周囲とは全く異なる空気に包まれます。まるで、樹々によって結界がつくられているかのように、神聖な空間が広がっています。境内は決して広くはありませんが、手入れが行き届いており、清らかな雰囲気が漂っています。
本殿に進み、天児屋根命に日頃の感謝を捧げ、神恩感謝を祈念します。本殿の奥には、ご神木と思われる巨木がそびえ立っており、その存在感に圧倒されます。
坂戸神社の境内をゆっくりと散策すると、周囲に放たれている霊力の強さを感じることができます。かつて、多くの人々が参拝に訪れていたであろう、この場所の歴史と信仰の深さに思いを馳せます。
第三の目的地・沼尾神社 ~古代信仰の痕跡を留める神秘の社

坂戸神社からさらに車で約10分。民家の間を走っていると、「この周辺は神聖な区域です」という白看板が現れます。その看板を目印に、沼尾神社へと向かいます。

沼尾神社は、史跡鹿島神宮境内附郡家跡に位置しており、うっそうとした森の中にひっそりと佇んでいます。駐車場から神社までは、参道と思われる一本道を歩きます。木漏れ日が差し込む参道は、まるで異世界への入り口のようです。

参道を進むと、やがて鳥居と社が見えてきます。沼尾神社の御祭神は、経津主大神(フツヌシノカミ)。経津主大神は、武神として知られ、鹿島神宮の主祭神でもあります。

沼尾神社の境内に入ると、そこはまさに別世界。周囲を覆う木々の緑、苔むした石段、そして、静寂の中に響く鳥のさえずり。五感が研ぎ澄まされ、自然との一体感を感じることができます。

沼尾神社は、非常に強い霊力を持つ場所として知られています。神だけでなく、様々な精霊の存在を感じるとても濃密な空気が流れており、訪れる人々を魅了します。
本殿に進み、経津主大神に日頃の感謝を捧げ、国家安寧を祈念します。本殿の奥には、磐座と思われる巨石が鎮座しており、古代信仰の痕跡を強く感じさせます。
かつて、沼尾神社の近くには沼尾池(江戸時代に枯渇しました)があり、沼尾神社はこの沼尾池をお祀りしていたそうです。古くは池がご神体であり、常陸の国風土記には、沼尾池に関する記述が残っています。「香島の神の社の南に郡衙がある。また(社の)北には沼尾の池がある。古老が言うには、『(この池は)神代に天から流れてきた水沼である』と。」

沼尾神社の境内をゆっくりと散策すると、自分がこの場と一体となっていくような感覚を覚えます。神域では、このような感覚が呼び覚まされると言われています。
まとめ・鹿島神宮と二つの古社を巡る旅~ 古代信仰と霊力の源泉を訪ねて
鹿島神宮を起点に、坂戸神社、沼尾神社を巡る旅は、古代信仰の痕跡と深遠なる霊力に触れる、貴重な体験となりました。
坂戸神社では、静寂の中に佇む社の雰囲気と、天児屋根命の御神徳に触れ、心が洗われるような感覚を覚えました。沼尾神社では、うっそうとした森の中に鎮座する神秘的な雰囲気と、経津主大神の力強い霊力に圧倒され、自然との一体感を感じることができました。
今回の旅を通して、かつて「香島の天の大神」として崇められた三社の繋がりを再認識し、それぞれの神社が持つ独特の魅力と霊力を体感することができました。
鹿島神宮を参拝する際には、ぜひ、坂戸神社と沼尾神社にも足を運んでみてください。古くは香島と呼ばれた時代に神が天から降り立った特別な場所で、今もなお強い霊力に満ちています。
旅のヒント
アクセス・鹿島神宮へは、JR鹿島線鹿島神宮駅から徒歩約10分。坂戸神社、沼尾神社へは、鹿島神宮から車でそれぞれ約10分。
服装・動きやすい服装と靴で。特に沼尾神社は、森の中を歩くため、虫除け対策をしっかりと。
持ち物・ 御朱印帳、カメラ、飲み物など。
注意点:・坂戸神社、沼尾神社は、民家の近くに位置するため、騒音などに注意し、静かに参拝しましょう。


旅の終わりに
今回の旅を通して、常陸国の神々の息吹を感じ、心が豊かになりました。古代信仰の痕跡を辿り、深遠なる霊力に触れる旅は、私たちに新たな発見と感動を与えてくれます。これからも、日本の各地に存在する神社を訪れ、その土地の歴史や文化に触れながら、心豊かな旅を続けていきたいと思います。